2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧
柳田国男の「遠野物語」には鹿踊りの記述も入っているが、より私に重要なことに、二百十日の歌を拾うことができる。 雨風祭の折は一部落の中にて頭屋を択び定め、里人集りて酒を飲みて後、一同笛太鼓にてこれを道の辻まで送り行くなり。笛の中には桐の木にて…
当時の造園学の一環として「装景」というのがあったようなのだが、宮沢賢治と装景の関係を扱った森本智子の論文が読みたいのだが入手がむつかしい。e.g.,宮沢賢治「装景手記」 実現されなかった賢治の花壇図案Tearful eyeを見てみる。実景ではなく紙面にある…
◆「ビヂテリアン大祭」および初期稿「一九三一年度極東ビヂテリアン大会見聞録」 「ビヂテリアン大祭」は冒頭で「菜食主義者」に対して「菜食信者」という呼称を提起している。たぶん誰でもいっぺんは考えるところだと思うが何々主義者という呼称は強すぎる…
どうもなかなかみんな日記には帰ってこないよう。いや ひとのことは言えない、言わ 自分のことを言うと何度もSNSに新アカをつくっては消し、日記に戻ってじくじく祈るという長いスパンの交替感覚がすでに久しい。この交替感覚を今後廃棄するのはかなり骨が折…
ものすごいミュージックビデオ論の連載 書籍化予定もあるとのことでこりは永久保存版でわ いろんな書き手によるMV論の充実を感じる昨今 湖海すず(@_0x0_suzu)さんと共同で連載していた「ミュージックビデオの身体論」も第10回で一旦完結。身体表象を切り口…
返却日前に急いでかき写し、手を休める。吉本隆明『宮沢賢治』。いい本だ。ほんとうに渇きが癒えるように読んだ。言ってみれば、ちょうど入沢康夫+天沢退二郎という仏文知のぎらぎらしたバックボーンから来る強靭な思考のカップリングが「まあ、その話はい…
青きひかり赤きひかりを閉ぢこめておく粉末は風を恐がる/綾部光芳『水晶の馬』 「毒蛾」は、イーハトブ地方の首都マリオで起こった毒蛾の発生、それに対応するひとびとの観察を「私」の眼から描いた小さなお話だ。このお話はのちに、童話「ポラーノの広場」…
入沢康夫の『宮沢賢治 プリオシン海岸からの報告』(1966~1990年まで発表されたさまざまな宮沢賢治に関する文章をおさめた大部──と呼んでよさそうな一冊)を半ばまで読む。森に近く行かねばという思いに苦しめられる。 朝五時ごろ家をでて暗い道を縫って大…
しかし異稿と言えばまずは聖書(てくすと)、ではあるだろうのでレギオンのエピソードにふれたみっつの報告文をマタイ、マルコ、ルカの各福音書から拾って並べておく。入沢康夫の詩のレファレンスとしては「悪霊が/村中の牝豚の胎内で一斉に目覚める」*1。 …
おすしの髪のために白インクボールペン買った(•ᴗ•)و ̑̑ pic.twitter.com/7v74ClTk3v — 里見U🌟平成敗残兵すみれちゃん (@USAT0MI) 2024年10月4日 平成敗残兵という名の受苦のもとに、すしカルマという女性にはさまざまな徴が与えられる。加齢に伴う身体上のク…
『【新】校本 宮澤賢治全集 第八巻 童話I 校異編』での「双子の星」異文/第X次までの推敲過程の提示例。 入沢康夫は、校本宮澤賢治全集の制作のため、賢治作品の異稿をこのように化石整理や土地測定に比されるような手つきで文字にライトを当て編集する経験…
文藝別冊の『宮沢賢治 修羅と救済』(2013年)。その後詩集『紫雲天気、嗅ぎ回る』をだしていくまだ昔の暁方ミセイが賢治作品との小さな自伝を寄稿している。うれしい。それから中沢新一、吉本隆明のインタビューはともにオウム真理教が「話題」に挙げられて…
「風の又三郎」直筆原稿で子供たちの学年が箇所によって違ったり、「三年生」自体が学校にいたりいなかったりする問題について、天沢先生はその部分ではそう読んでおけばいいのですと言っている。これは私もたいへんお気に入りの見立てであるし完全に同意し…
教育者がいて、言うことを聞かない生徒がいる。教育者は「鳥箱」*1だ。生徒はフゥ(フウ)というねずみだ*2。 前段として、鳥箱のなかでは三匹のひよどりの子供が死んでいる。ほか、一匹が「猫大将」にさらわれ、おそらくどこかで食われている。教育者の、鳥…
天沢退二郎『夢でない夢』、ブッキング、2005年 初版は73年、最初の小説集。これでオレンジ党の最後を読み残すばかりに。 天沢の小説が抱える最も外傷的な強度はよく思い返すと、イメージそのものが無残な風景をとっているというよりも、その意味が残虐であ…
『閑吟集』257番に「その地方の評判の美女の名」として千代鶴子という心に突き刺さるような名前の出没がある*1。その地方の、ということからおそらく「名無しの権兵衛」と同じく仮名というステイタスを持つ綴りだと理解しているが、この仮名は姓名システムに…
クレチアン・ド・トロワの『ペルスヴァルまたは聖杯の物語』(12世紀)を中心紋とし、『パルチヴァール』(エッシェンバッハ)、『散文ランスロ』(作者不明の『聖杯の由来』『メルラン』『聖杯の探求』などを含む)など、中世に集中的にかき継がれた一連の…
宮沢賢治「楢ノ木大学士の野宿」の初期バージョンとして「青木大学士の野宿」という作品があった*1。この青木大学士は推敲と改稿を経て先述の楢ノ木大学士という新しいキャラクターに「転生」したという訳だが、天沢退二郎はこの「青木大学士の野宿」の元原…
農民芸術概論、レコード交換の規約を記した文面、小学生時代の国語帳、句稿、肥料に関する学術論文など雑多な資料がおさめられた『宮澤賢治全集 12』(筑摩書房、1968年)に、「『旅人のはなし』から」という手帳にかきつけられた小さなストーリーを発見する…
宮澤賢治「風の又三郎」『宮澤賢治全集 10』、筑摩書房、1967年。 ヨルシカに「又三郎」がある(https://www.youtube.com/watch?v=siNFnlqtd8M)。曲調のよさの明確は措くとして、原作の又三郎、これはどう見ても爽快とはいいがたい。作中で「思いのまま」な…