描かれたイメージが無根拠に散乱しているのではなくとりあえず3次元的な空間に立脚していることを最も手軽に表現したいとき、ひとは手始めに線を一本引いてそれを「地平線」だということにするだろう、というような意味のことを含めた魅力的な文章を鈴木雅雄がイヴ・タンギーの絵についてどこかでかいていたと思う(3冊のマンガ論本のたぶんどれかで)。紙面をざっくりと分割してみせる一本の横線は、そこに描かれたイメージに対してたしかに最低限の保証というか、たやすく地平線/水平線だと無理矢理納得させられるやりかたの魔力がある。