立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー

「立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー」(ななにのん、2024年)をプレイした。思ったよりいろいろな点を考えさせられた。

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『立ち絵が変なポーズの恋愛アドベンチャー』でヒロインたちが変なポーズを取っている意味はとくにない(のがよい)【デジゲー博2023】 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

 

まず、言っておきたいのは、「変なポーズ」はゲーム開始後10分もしないうちに見慣れる*1。「異化効果」が見慣れたものをそうでなくさせる経験なり手法なりのことだとすれば、このゲームは逆に見慣れないものを取り扱う訳だが、異化効果がしばしばそうであるようにこのゲームの変なポーズもあっという間に常態化する。異物感は希薄になる。変わってなにが前面化するかというと表情の差分である。正確には表情の差異を追いかけながらテキストのドラマとあわせてその心情の波を玩味するという、ADVの言ってしまえばまっとうな経験の円滑さが異物感に取って代わる。

先のレポートにもあるけれど、キャラクターたちは各々の「変なポーズ」に対して言及しない。ここでいろいろ言えることはあるし、プレイフィールに対してその帰結の「効果」というのもある。そしてこの、ともかくも言及のなさの積もり方に向けてエンディングはまさに言及するだろう。そこでもまたいろいろ言えることがあるだろうし、その効果もある。やはりふだん自分が立ち絵のなにを見て、いや、見がちなのかというと顔の変化なのだなということも思い知らされる。そうするとしかし再び、ポーズはなんだと思っているのか。顔に対する環境?

*1:それにそもそも一口に「変なポーズ」なるものがある訳ではないだろう。そのポーズが変かどうかはシチュエーションとの整合性に多くよるし、用意されているいくつかの立ち絵は「自然」に見えさえする。あるいはもっと破壊的な言い方をすれば、そういうものだと思えば問題はいっさい感じなくなる。そうでなくても、自分のポーズとなんの齟齬も起こしていないように振る舞うキャラクターたちに100%肩を預ければ──。さらにある種の「サンプルゲーム」の鑑賞見地に立てばこうした立ち絵は実際、ナチュラルでもある。