すみれちゃん「サン=テグジュペリは夢をみる」(webマトグロッソにて現在5話まで掲載)

時は第一次大戦後の1926年、フランス。
ある作家の生涯をモチーフにした夢見る飛行士の物語──。
郵便配達会社にパイロットとして採用されたアンでしたが…。

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私のなかでは今年のべすとマンガのひとつに早くもなりつつある。資料と観察を、血肉にも力にもかえて描くことができる作家。コマ割り、構成、ページ上の内容の差配、独自の見識をそなえた絵柄、それらがすばらしいのはもちろん、すでに高い水準にあるところ(「"完成度"という懐かしい言葉」・・・)から連載という作業を通じてもう一歩進もうとしている感触にあちこちでどきりとさせられる。台詞量は豊富であるけれどいわゆる「寄り道」に類する冗句的な会話は少ない印象があり、それが荷物─運搬の主題にあわせたストイックさに似た筋で道を渡っていくような強さをもたらしている。20年代のフランスを背景としていることもあり、「ナジャ」(アンドレ・ブルトン)の末尾の消息不明の飛行機から一度きり入った無線の挿話を思いだすことにもなった。